川崎フォトエッセイ  その156  海水浴    ←前 次→  HOME

 大げさだが、海水浴は、太古の地球と繋がっているような趣がある。

「海の家」などと呼ばれている建物で着替えをし、砂浜に出ると、それまでの日常とは切り離された空間に体を置くことになる。水着のポケットに財布や携帯電話を入れることはできないからだ。まあ、銭湯で湯船に入っているようなものである。

 海水浴は太古からある海水と砂浜と太陽だけの世界だが、タイヤチューブの浮き輪や、沖を行き交う船舶は、今のものだ。しかし海の上ではそれら人工物も頼りなげで、自然がまだまだ優勢である。

 都市近郊では泳げない海が多い。海岸線はほとんど埋め立てられ、以前砂浜だった場所は工場や団地が建っているからだ。

 数年前に行った四国の海水浴場は、夏場だけ列車が止まる駅で降りた。僕の住む大阪近郊から、そこまでワープしないと「普通の海」を体験できなくなったのだ。