川崎フォトエッセイ  その157  ある一面    ←前 次→  HOME

 ものは、見る角度によって違って見える。写真の場合、その「ある一面」を平面的に切り取ってくれる。シャッターチャンスで一瞬を切るとると同時に、場も切り取る。

 切り取られたものは、見慣れた風景でも、断片を示されることによって、観る側の認識も違ってくる。人間の目なら、場を認識しながら見るので、実態に近いもの(その人にとって)に補正、修正されるが、写真の目は場の実情を説明してくれない。

 歯が痛いときに見る風景は、いつもの風景でも、歯痛が加わった風景になる。見え方は変動相場制なのだ。

 トリック写真ではないかぎり、それほど大きな誤りを犯さず、映っているものを推測することはできる。しかし、印象が違ってしまうと、同じものでも受け止め方が違ってしまう。

 僕らの日常は、錯覚や誤謬のなかを泳いでいるようなものである。