川崎フォトエッセイ  その183  絵図    ←前 次→  HOME


 高いところに立つと見晴らしがいい。観光地なら鳥瞰図が置かれている。それと実物を比べているとき、僅かな違いが面白い。

 それは描かれた時期と今とでは、建物や山の端が変わっているためだ。それは寛容範囲内に治まっているので問題はないし、仕方がないのだが、絵そのものが狂っている場合はどうにもならない。しかし間違いではないのだ。

 パノラマ図が写真ならいいが、絵筆で描いた図はどうしても描いた人の癖が出てしまう。写真のように無機的に平面に置き換えられないため、どうしても省略や書き加えがあるのだ。その嘘を入れないと、それらしく見えないからだ。

 絵に描かれた風景は、いくら近付いて見ても、それ以上の情報は得られないが、現実の風景は視力が良ければさらに詳細な情報を得ることができる。

 絵図のメリットは風景の見方を示すことだ。風景の方向を示すことだ。まるで道路標識のように……。