川崎フォトエッセイ  その200  常連客    ←前 →次  HOME

 行ったことのない喫茶店に入ると、場が発生していることが分かる。この場合の場とは、常連客らしい人々の場である。

 僕がいつも行く喫茶店でも、場は発生しているが、それに気付いていない。いつもの人がいつもの席に座っているだけなので、それが独自の場だとは思えないからだ。ところが、旅先で寄った喫茶店とかでは、場の発生状態がよく分かる。これは外部からでないと気付きにくいことなのかもしれない。

 常連客の場は、カウンターあたりで発生している。そのため、うかつにその結界内に踏み込むと、疎外感を味わうので、テーブル席に座るのが妥当だろう。

 しかし、場の結界も、常連客の登場時間帯によって違う場になる。つまり、同じ劇場で、違う劇をやるようなもので、劇団が変われば、場の雰囲気も変わるのだ。

 喫茶店の客は、その種の「場の団員」ばかりではない。むしろ、その団員さん達のほうが特殊で、一般客が本来メインのはずだ。喫茶店空間のニュートラル性を常連客がローカルなものにしてしまう。

 盛り上がっている喫茶店ほど、喫茶店らしさから遠のくのだ。