川崎フォトエッセイ  その205  古い視線    ←前 →次  HOME

 ある建物ができた当時は、その時代の先端をいく「現代」が、そこにあったのだが、「現代」はそこに止まっていないので、スライド式に「古い現代」になる。

 建物の場合、建て方が変わった時点で「その現代」が「古い現代」になる。この種の建物と、今の背景を見ていると、古い建物が妖怪のように思えてしまうが、そう感じさせるのは、今の現代のせいだろう。つまり、妖怪を生み出しているのは、そのものではなく、今の視点ではないか……と。

 しかし、僕の視点も、決して今の視点で見ているわけではない。ある時代に固まってしまった視点かもしれない。今の視点にワープできるのは、今の建造物を見て、ハタと、今を感じてしまい、今に気づき、今の視点を得るような感じだ。

 ただ、子供時代、古い農家の前で遊んでいた思い出があり、それが継続しているため、僕の頭の中では、古い農家時代の視点が、未だにベースになっている。