選択外の現実がある。選択肢の中にさえ含まれない行為を指す。その人にとっては実現不可能で、どう考えても無理な展開先のことである。「そう思い込んでいるだけ」ではなく、完璧なまでに実現できないこともある。本来なら、それは想像さえしないため、あまり日常を蝕むことはない。
しかし、ある日、ある人にその可能性を示唆されたとき、少し考えてしまう。自分では諦めていたことでも、他人から言われると、現実の範囲内に入れてもかまわないように思えてくる。なぜなら、虚言でない限り、可能な現実として取り上げられているからだ。
その人にとっての今の現実を塗り替えたり、方向性を変えるのは容易ではない。今に慣れてしまうと、新たな展開に向かうのは不安であり、対処もしにくい。
古い建物を見ていると、展開を断った諦めの香りが漂う。