川崎フォトエッセイ  その293  黄昏時    ←前 →次  HOME


 黄昏時はわずかな時間の間に過ぎ去る。結局は徐々に暗くなることなのだが、昼でも夜でもない世界がそこにある。

 日が暮れても、その日が終わるわけではない。その日は夜の12時までまだあるのだが、それは時計の上での話だ。動物としての人間は、ここで一日が終わるのかもしれない。

 黄昏時は光の世界から闇の世界へ向かう狭間である。電気のスイッチを押せば、明るくなり、消せば一瞬にして暗くなるのと違い、アナログ的なエンディング時間の演出をしてくれる。そのため、その間に、ものを考えたり、ものを感じたりできる。

 通勤電車内で、黄昏ゆく町並みを見ていると、素の人間に戻ってしまうことがある。日常や社会とかの個々の次元ではなく、もっと遠いところからの制御を感じる。

 何となく、偶然そこにいて、日々のことをしているだけの存在のように思えてしまう。