川崎フォトエッセイ  その337  壁一枚    ←前 →次  HOME

 道から見ると、それは壁だが、壁の向こう側数センチ先は、人が暮らしている家の中である場合、凄い至近距離で接していることになる。

 中に人がいるだろうことはわかっていても、中が見えなければ、その気配は伝わらない。それが壁というものだ。

 しかし窓は、気配の交差が可能で、窓を開ければ、繋がってしまう。窓は採光や風通しのために必要で、外を見て空模様を知ることもできる。決して通行人とコミュニケーションをするためにあるわけではない。

 壁に窓があることによって、通行人も、中から見られている可能性があり、道ばたで、妙なことをしていると、発見される。

 壁や窓の向こう側は、住人のプライベートな空間で、そこへは通行人は入れない。ただ、壁一枚で、その仕掛けが成立しているのは驚きだ。壁はただ単に物理的なものではなく、「仕切」として、犯してはいけない文化的な存在だ。