川崎フォトエッセイ  その349  鉢植え    ←前 →次  HOME

 路地裏は宅地の中にある狭い道である。路地から塀越しに庭が見え、植木や草花を観察することはできるが、玄関先だけが表を向いている路地では、鉢植えが置かれている。

 これもよく見かける光景だが、盆栽の鉢が軒下や棚に並び、擬似的な庭を造っている。当然一つ一つの盆栽にも世界があり、宇宙がある。盆栽の小宇宙が無数に並んでいるのだが、興味のない人はあまり注視しない。

 だが、それらの鉢植えが消えてしまうと、とたんに路地が殺風景なものになる。それらの鉢植えを大事に育てているであろう……というような空気が消えてしまうからだ。  日本人の深い血の中には、自然との一体感が流れているのだろう。住居に深山幽谷の植物を置き、それを眺めながら暮らす。

 この種の状態は、建築というジャンルとは切り離されたもので、設計図の中にその種のものを入れると、自然さが壊れる。