川崎フォトエッセイ  その403 手前と遠方       HOME

 手前にあるものによって、後方にあるものの印象が違ってくる。窓越しとか肩越しとかもその例だ。あるものを単独で見るよりも、組み合わせて見たほうが、関係として興味深い。

 同一視野内にあるものは、同じ空間内にあるだけに、その関係が特殊でも、それは現実である。目にフィルターがかかって、現実が歪んで見えるとか、色眼鏡で見てしまうとかではない。

 しかし、手前に何かがあっても、全くそれを無視して、後方の見たいものだけを見る場合もある。手前のものは邪魔なだけの存在で、意識はそこにはない。

 人の目は、ある距離のものにしかピントが合わない。遠方を見ていると、近くのものはぼやけてしまう。

 手前と遠方を交互に見る行為は、写真的には別の絵になってしまう。複数のことを同時に意識しようとして、両方ともぼけてしまうこともある。