川崎フォトエッセイ  その428 無人       HOME

 人がいつもいるような場所がある。たとえば電車の中とかだ。その場所が無人だと、寂しい場所に見えてしまう。人が座っていたであろうシートだけが並んでいるを見ると「すいている」と、感じる以前に「大丈夫かな?」などと、心配になることもある。

 常の状態が、そうでなくなっているとき、妙に落ち着かない。その状態が偶然生じた空間であったとしても、あるべきものがない状態は違和感を感じる。

 人はその種の感じを常に持ち続けながら日常を送っているのだが、あえて口にすることは少ない。なぜならば、少し考えればわかるような状況だと、妙な感じも理解すること、了解することによって包み込んでしまえるからだ。そこから先は、また普通の状態に戻ることを知っている。

 ただ、この一瞬の間合いに感じたことを、さらに延長、妄想に耽るのも悪くはない。現実はこちらの妄想とは関わりなく、進行している。何事もなかったかのように。