川崎フォトエッセイ  その430 具象への飢え       HOME

 見ただけでは、それがなんだかわからない風景がある。現実上での何かだろうが、クローズアップや周囲のカットで、なんであるかが特定しにくくなる。

 この世の現象である限りにおいて、たとえそれを一度も見た経験がなくても、どこかで似たようなものを見ているものだ。そのため、何かに喩え直すことはできる。

 風景と言葉とは違うが、見たことのあるような「言葉の言い回し」は多々ある。また、一度出会ったような「話の筋」もあり、語る人が何を言っているのか内容がわからなくても、その語り口で語ろうとしている「お話」は読める。

 僕らの持っているその種のパターン認識は、パターンである限りに置いて抽象的で、具は二の次としてある。語る内容に対しての普遍性はないが、そのパターンにはある。

 抽象化することにより、拡がりは増えるが、具象性への飢えはどうしても出てきてしまう。