川崎フォトエッセイ  その446 無視       HOME


 無視してもかまわない現象がある。それは自分と切実に関わらないことであればあるほど無視度が高くなる。または、関わりすぎるため、あえて無視する。

 無視とは字句通り、視界に入っていてもないものとして振る舞うことである。しかし、無視というのは積極的な行為で、単に対象が見えないのではない。

 日常のどうしょうもないような風景に心が和むこともある。異境から戻ってきたときに見る町内風景とかがそうだ。相変わらずのものが相変わらずの状態でそこにある。その良さは普段気づかないが、日常を脅かすような体験があったときなど、この何気なさがありがたく思えてしまうのだ。

 風景は見る側の心理でいかようにも変化する。形がどうの色がどうののレベルを超えた箇所から見ているのだ。

 風景を快く見られる日々は、それなりに幸せなときかもしれない。