川崎フォトエッセイ  その448 抜き取る       HOME

 絵は現実のある一面を抜き取りすぎることがある。作者が見た印象を表現するわけなので、それは間違ってはいないのだが、現実側から見れば、誤解されていると思うだろう。

 フィクションは現実よりも、リアルだという意見がある。「嘘」のほうが、より現実を言い当てていることがあるからだ。しかし嘘へ至る作者の頭の中でのプロセスは、保証されるものは何もない。イマジネーションによる綱渡りである。そこに何らかの「理論」が入っていたとしても、絵になってしまうと、それはもう見えないし、否定か肯定かさえも絵だけでは判断しかねない。

 イメージは誤解した世界だ。では現実は誤解されていないのかというと、そうではない。画家でない人でも頭の中でイメージをはぐくんでいる。その意味で現実を見ている画家以外の人も、画家と同じように現実を印象で抜き取っているのだ。