川崎フォトエッセイ  その451 現実と影       HOME

 影は具象性が少ない。輪郭とタッチだけだ。それだけに抽象性が高い。具象は任意の何かで、情報としては絞り込まれている。輪郭だけではなく、表面の色彩とか材質とかも明らかになっている。

 道路標識のシルエットだけでは、何の標識なのかが分からない。ただ、輪郭で、道路標識だと認識できるだけだ。その中に任意の情報が含まれていないことが影の影たるゆえんだ。

 僕らは任意の生活をしている中で、この影と共存している。それは抽象的で普遍的なものを指すこともあれば、不快なものが影となってつきまとっていることもある。

 影は実は任意のもので、何かの影ではあるのだが、その何かが後ろにいるだけに、実体が視野には入ってこないため、紛らわしいことになる。

 確かに僕らは何かの影響を常に受けている。影は実体がなければ存在しない。だが、影だけが一人歩きすることもある。それは外部ではなく、心の内部に影が書き込まれてしまった場合だろう。