川崎フォトエッセイ  その462 匿名の関係       HOME

 その人にはその人の通り道がある。しかし同じ道を複数の人が利用している。たとえば同じ会社の玄関口から出てきたときは人数も多いが、そこから先はばらけてくる。今度は別の場所から来た人と合流し、そして、それもまた最終的にはばらけ、最後は自分の家にたどり着く。その道程をそっくりそのまま共有する他人は滅多にいない。会社と会社の寮とかの往復なら、かなりの人と共有するかもしれないが、それでも同じ道筋をたどるとは限らない。

 ターミナル付近を行き交う人々が、何処から現れ、何処へ去っていくのかは、それほど詮索しない。よほど妙な感じの人でも目撃しない限り、興味を持つことは少ないからだ。

 都市では他人に無頓着なのではなく、あまりにも人数が多いため、気にしていたのではやっていけないからだ。

 通行人同士は互いに匿名の関係でしかない。