川崎フォトエッセイ  その485  モダン      HOME

 ある時代のモダンな建物は、時代を経るとかわいそうなほど過去へ後退している。しかしその過去は伝統的な過去ではなく、浮島のような過去で、何処にも繋がらない孤独さが漂っている。

 時代の先駆けとなったものも、その後類似するものが増えると、最初のものまでもありふれたものになってしまう。

 そして流行りが終わったところで、その系譜がとぎれてしまうと、あとは古びていくだけだ。時代の先駆けだった人々が老け込み、静かに余生をおくっているよう感じである。

 そのころになると、初期のとんがった鋭利さは薄れ、程良い佇まいとなる。そして流行りの気負いは消え、ちょっと変わった建物……というレベルに落ち着く。

 そのレベルになって、やっと平穏に建物内で暮らせるようになれるのかもしれないと思うと、皮肉な話である。