川崎フォトエッセイ  その514  田園の憂愁      HOME

 田畑を見ていると、季節の移り変わりがよくわかる。田畑は花の栽培以外は観賞用の植物を植えているわけではない。あくまでも実用的な仕掛けで、栽培されているもののほとんどが食べるものだ。人が食べるものもあれば家畜に食べさせるものもある。

 人は何かを食べないと生きてはいけない。そして食べ物は自然界から提供されている。植物を栽培するのは、真摯なことで、生きていく上でのメインの線上にある。書いた絵を売るとかのレベルよりも、人にとっては切実な事柄である。

 その種の田畑を見ていると、作っている人の本意とは裏腹に、まじめなものを感じてしまう。そしてそこで展開される風景もまじめなものとなる。逆にこれは地味で、ありふれた田園風景なのだが、アートとして見た場合、素直に受け取れる絵となる。

 モダンなものは、簡単に足下をすくわれてしまう。それは基本が見えなくなるほど、多様な解釈が発生する世界のためだろう。