川崎フォトエッセイ  その562  落日      HOME

 植物も、それなりに進化したり、品種改良で、新種が出ているかもしれないが、街の景観ほどには極端な変化はないだろう。

 数年前は田畑だった場所に道路ができ、数年前にはなかった形のクルマが走っている。そんな状態の中で、あまり変化していない物体を見つけると、ほっとするものだ。子供の頃から見慣れている草花を市街地風景の中で見つけると、安心したりする。

 この安心感は、様変わりしすぎ、定位置が分からなくなってしまう不安感の裏返しかもしれない。しかし、過去へは戻れないし、また、戻ると逆にそこでの違和感を味わうだろ。

 人も草花も、本質的なものは何も変わっていない。その扱われ方に変化があり、配置に変化があるだけだ。

 僕らは任意の環境の中で暮らしている。その任意性が取り払われたとき、今まで拡張されていたものが、元に戻る。