川崎フォトエッセイ  その578  枯れ紅葉      HOME

 もみじ狩りは鮮やかな紅葉の色を見るところに値打ちがあるが、それをすぎてしまった「枯れ紅葉」は、くすんだ色になり、見物客も遠ざかるようだ。

 別に紅葉を見るために散策するのではなく、単なる散歩中に遭遇する紅葉シーンは、日常的なリアリティがある。

 紅葉は花の開花と同じように、花見に近い鑑賞の仕方がある。見た感じでは似ているからだ。満開の桜を見るように、鮮やかな葉を見るのだ。

 枯れゆく花にも味わいがある。派手なものよりも地味なものを好むときがあるからだ。花盛りを過ぎ、鑑賞対象としての客寄せが下手になった境地は、心境として共感できることもある。こちらのほうにこそ人生規模の味わいがあり、その後の日常がある。

 花見や紅葉は、いわば一瞬の出来事で、それだけに価値は高いのだが、その行為に空しさを感じてしまうことがある。