川崎フォトエッセイ  その583  石の船      HOME

 普通は石で船は造らない。お伽噺の中には泥船が登場するが、危なっかしさの象徴のようだ。ところ砂の海でなら石の船もおかしくはない。これなら沈むことはないと言うより、最初から海底や川底にいるようなものだが……。

 石や砂は不自然なものではないが、それを組み合わせると不自然なものになる。それとなく何かを現そうとするからだ。

 それが現れてくるのは、見知ったものに喩える要素があるからで、その喩え方が不自然なだけである。

 さらに、その喩えに乗ったり嵌ったりするのは見る側の問題で、空に浮かぶ雲の形が船に見えたりするのと同じである。石の船も、船に似た自然の石が存在することがある。その石の意志としては船を現そうとしているわけではない。自然に船の形になっただけである。

 何に見立てるのは、人の持つ感覚であり、共通するものが見えないと、それはただの石であり砂でしかない。