川崎フォトエッセイ  その626  言葉の輪郭      HOME

 輪郭がはっきりとしているものは把握しやすい。さらに形が明快なものも分かりやすい。

 物よりも「物事」に対する把握のほうが難しいのは、物理的な形としての輪郭が見えないためだろう。確かに「話の輪郭」とか「話のアウトライン」は、存在するが、それは言葉の上での話だ。

 僕らは、話を聞くとき、語り手のイメージに依存する。その語り手が、僕を相手に話すときは、僕用の喋り方をするかもしれない。さらに、同じ話でも、語り口や表情によって、肯定が否定になったり、誉めているようでけなしているようなニュアンスが含まれたりとかがあり、話の輪郭が存在していても、意味が幾通りもできてしまう。

 比較的、当事者がその場にいない「話」は、淡々と語られることがある。

 言葉は話の輪郭を紡いでいくが、様々な関係が引力のように働き、そう語らせるようなところもある。