川崎フォトエッセイ  その640  抽象画      HOME

 抽象画の持つ抽象性とは裏腹に、人は生々しくリアルなものである。

 人物が絵の中に遠く小さく点在しいると、その生々しさも薄らいで見える。それが人物であることが確認できる程度の小ささだと、さらに存在感が希薄となる。

 匂いが届かないような距離、声が届かないような距離にいる人物は、迫ってくるものが減るためだろうか。

 抽象画の中にいるような人物にも血肉を感じてしまうのは、人間が人間を縁取ったものを見るため、人としての生理や気持ちが分かるためだろう。

 抽象性が増すことで、肉薄しない気持ちよさもあれば、任意の抽象が、リアルよりも肉薄するように感じることもあるはずだ。

 人の多くは人工物の中で暮らす、特に都会では人が造った空間の中で日常を過ごす。それらは何かの象徴を寄せ集めたものかもしれない。