川崎フォトエッセイ  その660  単なる風景      HOME

 僕らが外に出てまず見かける風景は路面が多い。それは、何らかの道を通って何処かへ行くからだ。その道が畦道であったり、路地の小道だったり、歩道だったりする。

 市街地の風景は、どの街も似ており、そこで動いているのはクルマや人である。それは極めてありふれた風景であり、風景画の世界では滅多に書かれないモチーフかもしれない。それは、絵としてのポイントが薄いためだろうか。

 絵画は、それなりに珍しさへの必要性がある。ありふれたものでも見方、描き方によって、違った世界が感じさせてくれるが、そのままの日常風景は、見慣れすぎていて、敢えて絵にする必要はないのかもしれない。

 写真は絵ほど作為的な弄り方が出来ない。現実をトリック的に加工することも可能だが、カメラを向けてシャッターを単に押して生まれる映像は、現実に近いものがある。それは単に資料的な価値しかないかもしれないが、作り物につきあうのが面倒なとき「単なる物」が見たくなるものだ。