川崎フォトエッセイ  その685  幼児幻想      HOME

 幼い頃の記憶は、歳月を経ることで、遠くのものになってしまう。幼児を見ていると、自分にもそんな時代があったはずだと思い返す。それは既に体験した世界であり、知らない世界ではないはずだが、別人のように感じることもある。

 十代後半から、今とは、身体的にも精神的にも繋がりは見えやすい。幼児時代に比べて、別人と思えるような断層はない。それは、自分というものをそれなりに一つの繋がりとして、読みとれるからだ。

 さらに、自分と周囲の関係も、幼児ほど謎ではなく、事情を把握しており、世界は幼児よりも狭くなっている。

 物事が分かり始めるに従い、世界が狭くなるのは困ったものだ。知らない事による幻想がそれだけ消えるからだ。

 幻想が世界を広くしている。幻想と現実は違うため、誤解した現実を大量に生み出すことが出来る。この現実よりも、仮象のほうが、惹きつける力は強い。