川崎フォトエッセイ  その695  下駄      HOME

 下駄は板の間や廊下を歩いている感じがするし、草履は畳の上を歩いている気がする。この種の履き物は、素足に近い感覚を維持している。草鞋になると、モロに藁の上を歩く感じで、しかも紐でくくりつけるため、山歩きも可能となり、運動にも追従できる。

 服装に関しては、何をしてもかまわないような風潮があるが、洋服と下駄や草履との組み合わせは、ミスマッチ度が高いためか、一般的ではない。

 ファッションにはデザイン的センスが必要で、下駄にはそのセンスがないように思われてしまいがちだ。それは、下駄が意味するところを日本人は知り尽くしており、その雰囲気がファッション的視点から見えないようになっている。むしろ、見たくない世界なのだ。下駄や草履など、日本的臭味から遠ざかりたいのだろう。

 この種のものが、街に出る機会があるとすれば、自然な出方ではなく、ファッションとしてパッケージ化され、形を変えて登場するはずだ。モロに下駄履きが可能な街にならない限り、日本人の持つコンプレックスが希薄になったとは言えない。