川崎フォトエッセイ  その750  影絵       HOME

 影絵には人物のディテールがない。輪郭だけだ。正面を向いているのか、横を向いているか、どのぐらいの大きさなのか、等が分かる程度で、あとは手足の動きで、表情を推測するしかない。

 それが単なる影絵でも、人影の動きは、自分も人間なので、動きを推し量ることができる。情報としては単純なものなのだが、逆に分かりやすい。

 日本語は、同じものでも、言い方が多彩で、ある動きに対して、その動きにふさわしい言葉がある。 「私」と「あなた」だけでも、方言を加えると、とんでもない数の言い方がある。この種のものは影絵では不可能だ。

 影絵は言葉数が少ない。そのため、ジェスチャーで補う。外人が大げさな仕草をするのは、言葉数が少ないためかもしれない。

 日本人が無表情に見えるのは、表情を使わなくても、言葉遣いで、自分の気持ちや相手との関係をある程度表現できるためだろう。そのためか、身振りが派手で、表情が豊かな日本人は、何となくわざとらしく思える。