川崎フォトエッセイ  その774  巨大建造物       HOME

 ちょとした山のように眼前に立ちはだかる建物は、人々に驚きを与える。その種の建物は、現代ではビルディングがそれに近いが、その中身は昔の寺社とは無縁の世界である。

 寺社の巨大な建造物の中は、神や仏が祭られており、一般の人はそこには入れない。生活の場ではないのだ。

 巨大なビルは、人の暮らしの中にあり、オフィスや宿泊施設であり、店舗の入ったテナントである。ここは地上の世界と同じなのだ。

 お寺の講堂や塔は俗世とは違った空間で、精神的機能に専念している建物だ。

 今の時代は豊かな時代なのだが、昔の寺社建築が持っていたゆとりがない。そのため新しく建つ超高層ビルや、モダンなビルを見ていても、所詮経済効率や、ビジネスでの機能空間が切り売りされていることが見えてしまい、空々しくなる。