川崎フォトエッセイ  その814  特化       HOME

 なんでもない町の風景があるように、なんでもない田園風景がある。町中にある田園風景は、何でもなさが重なり、何となく平和な趣となる。

 市街地だけが広がる町よりも、その中に田畑が混ざっている方が落ち着くのは、何かに特化した町ではないためかもしれない。

 僕らは常に選択肢の中にあり、複数の中から選択し続ける。選択しなかったものは遠ざかり、身近なものではなくなる。

 何かに特化したり、専門的になりすぎると、不自然さがつきまとう。これは選択前の状態を懐かしく思うだけかもしれないが…。

 一方に傾く方が、それに集中できる。その意味で効率はよい。

 しかし、それは選択するまで思っていたことで、選択し終えると、妙に淋しい。

 住宅地にある田畑は、そこに住む多くの勤め人家族にとっては関係のない景色だ。しかし、宅地だけが建ち並ぶ町は、選択しすぎているようで味気ない。