川崎フォトエッセイ  その838  反則行為       HOME

 落書きは意表を突く。社会は秩序を保つために作られたシステムなのだが、それは落書き一つでコロリとひっくり返るほどもろいものだ。もっともそれは表面的なことで、秩序が壊滅するわけではない。

 落書きは個人的情念から発するものが多い。社会や世間と呼ばれている表面世界の中に、全く自分が関われないとか、疎外感などから発生することもある。犬が小便をするように、自分の痕跡を残すことで、関わりを得たいのかもしれない。

 落書きは絵画のルーツだ。絵描きは絵を書く技術を持っており、それは社会的な評価ともなる。落書きは絵画以前の情念で、技術がなくても書くことができる。

 落書きは絵画ではない。絵画からも疎外された絵なのだ。生身の人間性とダイレクトに繋がっており、その意味で絵画よりも広い世界を含んでいる。

 落書きは社会では「反則行為」である。だがその現象は太古から続いている。