川崎フォトエッセイ  その904  いつも見ている       HOME

 リアルではない体験がある。作られた映像を見ての体験だ。テレビにしろ本にしろ、膨大な数の映像情報が氾濫している。

 そこで体験したことも、見た人間にとって、これもまた一つの体験となる。

 そして、実際に体験するときでも、実体験していない映像なり音声なりがフィールドバックされるような感じで、リアルと重なることもある。

 それは一枚の写真でもそうで、その印象がどこかに残っているのか、リアルに体験している最中に、その写真を思い出してしまう。

 その意味で始めて見るようなものは非常に少なくなってしまった。ほとんどの映像は、何処かで見ているのだ。

 そのため、知らない場所に降り立っても、それらの風景は、もう既に体験済みのように思えてしまう。

 実際に体験しても、それは映像情報と同じようにしか受け取れなくなると、何を見てもありきたりにしか感じなくなるおそれがある。