川崎フォトエッセイ  その907  造形物       HOME

 造形物の表情は、一度作ればそれ以上変化することはない。だが自然現象や人災による変化はあり、造られたころの雰囲気とは違っていることもある。

 造形物はこの世に長く残る。造られたときに置かれていた場所から移動されたり、捨て置かれたりすることもある。

 造形物にも旬があり、それを過ぎると、人との関わりが希薄になったり、それに込められた意味を失ったりする。

 これらは全て人がやっていることで、造形物は、単に物でしかない。そのため、いかに霊験あらたかな造形物も、火災に遭うし、盗難にも遭う。ひどい場合は人の手により傷つけられたり、破壊さえある。

 それが造られたころの表情のまま、その場に馴染まなくなっても、同じポーズをとり続ける。

 造形物は固定させることに意味がある。この世にないものをこの世に置くため、その後は、この世の人達の案配で、扱いも変わってくる。