川崎フォトエッセイ  その935  鈍さの演出       HOME

 時代の最先端で企画された衣類関係の店ではなく、単に陳列しているだけの店もある。陳列そのものが表の道にまではみ出し、通行人がちょっと手を伸ばせば、触ることも出来る。そうして単純に衣類をぶら下げているだけの店でも、それなりの工夫がなされている。ハンガーが階段式にずれていたりする。

 靴を買うには、靴屋に行くが、靴屋に行くための靴が必要だ。店構えの立派な靴屋なら、下手な靴を履いて行きにくい。洋服屋も似たような面があり、店の人の視線が気になる。その視線とは、客層を判断したり、客のセンスを読む視線だ。

 普段着で通行出来る商店街の店は、その視線が弱いように思える。適当な身なりでも、気にならない。

 店の人には、一種の鈍さが必要かもしれない。それは町や商店街にも言えることで、その鈍さが、随分助かることがある。

 財布の紐をゆるめる前に、気持ちがゆるまないと、買う気にならないこともある。