川崎フォトエッセイ  その966  苔       HOME

 昔の建造物の中には、自然との一体感があり、人工物か自然物かの区別が曖昧なところがある。たとえば、石垣の石は、本物の石が使われているため、自然との一体感があるのは当然と言えば当然だ。

 石や岩に苔が生えるように、石垣にも条件が揃えば同じように生える。

 石は鉱物で、苔は植物だ。植物のほうが変化は多い。石垣の表面だけでは変化は少ないが、苔という生物が表面を覆うことで、変化が楽しめる。

 苔が生えることは、雑草が生えることよりも、縁起の良さを感じる人もいる。苔が生えるほどじっと動かないことは、継続性の高さを示すからだ。

 世の中には変わったほうが好ましいものと、いつまでも不動のままのほうが好ましいものとがある。

 全てのものはいつかは消えて無くなるだけに、いつまでも残って欲しいものがある。

 苔が生えるほど、じっとそこに座っているような人などはいないが、継続性を尊ぶ面があることも確かだ。

 

 

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