川崎フォトエッセイ  その1038  動く輪郭線       HOME

 自然の中に人工物がぽつんとある風景を珍しく思うのは町で住んでいるためかもしれない。

 町も、それが出来るまでは自然の土地だった。もう何世代もの先祖時代からの町だと、それ以前の状態は考えにくい。

 しかし、その周辺に残っている自然を見ていると、それと似たような眺めではないかと想像は出来る。

 市街地にあった建物が取り壊され、ぽっかりと姿を消すと、地面だけが残る。建物の凹凸ではなく、地面の凹凸が輪郭線となる。

 空襲などで平野部が焼け野原になれば、起伏のある場所や河川などが目立つ線となるだろう。

 市街地で暮らしていると、遠くに見えていた山の線が見えなくなり、建物の輪郭線も、日々変わっていく。

 生まれたときから死ぬまで、変わらぬ景観を見ながら一緒を終える‥などは、考えにくくなった。