川崎フォトエッセイ  その1155  立ち現れ       HOME

 それは現実の風景なのだが、そうではないように見えてしまうこともある。

 実際には、現実のものを見ているわけなので、そうではない世界であるはずはないとは思うはずだ。

 決して、非現実なものを見ているわけではないことを知っていても、それでも不思議なものを見ているような気持ちになる。

 それは、僕らが見ている現実が、本当に、そのように見え、そのものも、そのものとして、確かにそこにあるのかどうかに対する疑いがあるためかもしれない。

 僕らが見ている現実は、自分に即した「実用性の高い現実」で、そうでないものは、見ていても見えていない疑いがある。それは、見る必要がないためだ。

 ところが、漠然と、非実用的な視線で、何かを捕らることがある。本来、見ようとは思わないもの、見る価値がないものなので、現実の中には、現れにくいものだ。

 立ち現れてこない現実のほうが、遙かに多いということだ。