川崎フォトエッセイ  その1159  畏敬のもの       HOME

 それが尊く、有難いものであっても、薄気味悪く感じることがある。それは、この世のものではないためだろう。

 しかし、畏敬の念を抱くには、多少は、不気味なほうが、効果は高い。

 怖く感じさせるものは、見る者に緊迫感を与える。さらに、近寄りがたさを与え、人々との距離感を感じさせる。

 人を越えた存在が必要な時代があった。その存在を本気で信じられていた時代もある。

 仏像を古美術品や文化財として見るようになってしまうと、もう、それは人を越えた存在ではなくなってしまう。

 神や仏が、消えてしまった文化がある。その文化の仕掛けが必要でなくなっただけのことだろう。

 歴史は繰り返されるが、後戻りは出来ない。この国の仏像も、もはや人知を越えた存在として普通に思うことは、難しくなっている。