■気楽に電子書籍が出せる時代
電子出版を自分で作る話だ。
紙の本よりも安く手軽にできるのだが、できることはできるが、できるだけということもある。
小説やエッセイ、漫画や実用書を書いたとしよう。
それなりのボリュームがあり、一冊の本として出せる。しかし費用がない。
自分のパソコンの中に、ファイルとしてあるとする。それを自費出版という形で、電子書籍の体裁で作り直す。
元のファイルはワープロなどで保存しているはずだ。それをPDFというファイル形式に変換すれば、すぐに電子書籍としてパッケージ化したことになる。
ここまでは自分のパソコン内での出来事だ。
それを友人に配るとか、自分で電子書籍端末に入れて読むとかなら、問題はない。
問題はないが、それだけのことで電子書籍を作る意味はあまりない。
しかし、電子書籍端末を買ったので、自分で書いた文章もその端末で本として読むこともあるだろう。それはいいのだが、出版するという意味とは少し違う。
より多くの人に読んでもらいたいとか、発表したいとか、できれば売りたいと思うだろう。
社長が自伝を電子出版し、社員や関係者に配るのはよいことだ。問題はない。それを外部の人間に売ろうとすると問題が出てくる。
つまり、出版社のようなことを個人でできないかということを考えると、いろいろな問題が出てくる。
ただ、これは作る側の技術的な段取りの問題もあるし、流通関係のどうしようもない問題も出てくる。
作っても売れるだろうか……ということだ。
個人が勝手に作ったものなので、売れなくても別に問題はないかもしれない。大した経費もかからないので、出すだけ出そうというのがほとんどかもしれない。
よほどの有名人でもない限り、またはベストセラー作家でもない限り、大した儲けにはならないだろう。
だが、本を自分で出すのは、魅力的だ。電子書籍としてできあがったものが見たいというのもある。
だから、とりあえず作ってみるのも悪くはない。
そういった個人が勝手に作った電子書籍は、以前なら情報商材的なニュアンスがあった。なぜなら、二万円も三万円もするような本は、ふつうの本ではないのだ。
情報商材的な高いマニュアル本は、内容に対する価値ではなく、ネズミ講的なアイテムだろう。自分も一冊買うが、同じものを他の二人に売りつければ一冊分の儲けになる。
しかし、最近の電子書籍のネット上での販売価格の上限は三千円程で、多くは数百円だ。だから、純粋に本の中身に対する対価だろう。
それだけにインチキができないのが昨今の個人が出す電子書籍の傾向だ。
今までブログで書きためたエッセイが単行本一冊分の文字数になったので、それを機会に電子書籍として世に出してもいいのだ。
せいぜい五百部程度しか売れない小部数の本は出版社は最初から出さない。だから、自分で印刷代を払い、自費出版していた。だから、決して気楽な行為ではなかった。気楽にさせないのは、お金がかかるためだ。そして、儲かることもない。
それが、電子書籍でなら、個人が簡単に出すことができ、それを売るプラットホーム、つまりネット上の書店も増えるだろう。
売れる売れないは別として、売り物として世間に出せる。
結局一冊も売れなかっても、電子書籍を作る人件費程度の損出ですむ。自分で作るのだから、タダ働きになるが、それを作っているとき、それなりに楽しめれば、趣味として片づけることもできる。
また、新たに書き下ろさなくても、いろいろ書きだめたものがあるのなら、すぐにでも出せるような話だ。