■電子書籍の編集と装丁
電子書籍販売サイトに個人が作った本を出すのは、蛸壺の中に投げ込むことだと言ったが、投げ込むための方法がサイトによりまちまちだ。
個人が用意したPDFファイルをそのまま投稿する場合もあるが、必要なファイルはそれだけではない。表紙の画像も用意する必要がある。なければ、タイトルと著者名だけが表紙のような台紙に表示される。あった方がいいだろう。しかし、こういうのは準備してからでないと、投稿フォーム画面で焦ることがある。誰でもできることなのだが、表紙も自分でデザインしないといけない。これを楽しいと思うか、苦しいと思うかは、人によって違う。
自費出版は、基本的には一人で作る。だから、表紙も、申し込みも自分でやる必要がある。相談できる人がいるならいいが、そうでない場合は、すべて、自分で決定する。本来なら、装丁するデザイナーなり、編集員がいる。それだけのことでも時間をかけて打ち合わせし、ブックカバーデザイナーは写真が必要ならカメラマンに依頼したり、イラストにするのなら、イラストレーターに依頼する。それらを自費出版の本人がちょいちょいと作るわけだ。これだけでも実はひと仕事なのだが、無地の用紙の上にタイトルと著者名だけでもいいのだ。この省略の仕方が、電子書籍の面白いところだろう。
本来はいろいろな専門職の人がやることを、一人でやってしまうのだ。確かにこれは、コスト的には安くつくだろう。個人が「これでいい」と思えば、それで決定なのだ。
また「この程度でもういいだろう」でも大丈夫なのだ。この敷居の低さ故に、多くの人が飛び越えられる。
個人サイトによる電子書籍直販のマイナス面は、その個人のホームページやブログにどれだけ人が見に来るかだろう。
電子書籍を出すために、個人サイトを作っても、よほどのことがない限り、アクセスは少ないだろう。
そうなると、自分で作った電子書籍を売るために、ブログやホームページに力を入れることになる。
最初から人気のあるブログを持っている人なら、直販は簡単だ。ブログやホームページを見に来てくれる人が電子書籍の購買者になる。
ブログを持っているが、一日数人しか来る人がいない場所なら、直販は無理だろう。
それで以前からあったようなフリーマーケット系での委託販売や、自費出版系の電子書籍を販売してくれるサイトを利用することになるのだが、そういう場所は蛸壺現象が待っている。埋もれてしまうのだ。
個人のブログやホームページで販売する場合、埋もれてしまうことはないが、そのブログやホームページがネットの海底に沈んでしまうだろう。
そういった現実を踏まえた上で、電子書籍の自費出版を考えた方がいい。
ちょっと引いて考えると電子書籍の自費出版もブログとそれほど変わらないことがわかる。
どちらもネットを使っており、ネットの原則のようなものが動いている。
ただ、自費出版する本の内容にもよる。本人が書く場合、あるいはすでに書いたものがある場合、売れるものかそうでないものかの判断が必要だ。
自分は面白い本だと思うが、本屋においてもおそらく売れないだろうと、自覚している人なら、それなりにやり方を考える必要がある。
つまり、自己満足的に出すということだ。金銭が目的ではなく、自分の本を第三者、または見知らぬ人にも読んでもらいたいという程度なら、それなりの満足は得られるだろう。
それは、バーチャルな本屋だとしても、そこに自分の本も並んでいるという意味で。