電子書籍自費出版

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■辺境性は悪くない


 自費出版した電子書籍は、ネット上での本屋以外でも売ることができる。
 ブログやホームページ上に直販所を作ればいいのだ。カートが必要なら無料のショッピングカートも使える。
 また、一番単純な方法として、メールのやりとりだけでも販売はできる。
 ただ、そのブログやホームページが、数ある中の一つなのだから、それこそネットの蛸壺の中に埋まることになる。
 どこまで行っても蛸壺現象から抜け出せないので、蛸壺現象度をできるだけ低くすることを考えることだろう。
 人が多くアクセスするブログやホームページは、何らかの優位な情報が載っていることだ。
 何かについて知りたいとき、検索を使う。だが、ありふれた検索語では何万もの候補があり、そこもまた蛸壺だ。自分のホームページが43231番目に載っていたとしても、そこまで見に行く人はいないだろう。
 本でいえば、ポピュラーなことが書かれている本と、専門書やローカルな内容の本がある。自費出版の本は、このローカルな狭い範囲の特殊なジャンルやネタを扱ったものが多いのではないかと思える。大型書店に行っても売っていないような本だ。
 特殊な樹木についての本とか、名前の知られていない虫についての本だ。こういうので検索する人は非常に少ないし、また、それが書かれているホームページも少ない。
 これは「ローカルな」「辺境な」世界だ。決してローカルが地方であり、田舎だという意味ではなく、中心部から離れたものを指す。平たく言えば流行っていないのだが知る人ぞ知る事柄で、悪い意味ではない。
 自費出版も、出版界から見れば辺境だ。
 だから、辺境の良さからの発想が好ましいように思う。
 これは地方の特産物のようなものでもある。しかも地元の人しか知らないような。
 かなり大きな書店でもおいていないような本や、ネットで探しても見つからないような本。こういうのが電子書籍自費出版には合っているように思える。
 たとえば電子書籍に関する本を本屋で探すと、ほんの数冊しかないことがわかるだろう。このようにカテゴリーの階層が深くなればなるほど、該当する本は少なくなる。
 あまりにも狭い範囲の事柄が書かれた本など売れないので、出しもしないのだ。出ていても絶版になっていたり、かなり古い本だったりする。
 自費出版の本の辺境性は、その意味で有利なのだ。ただ、とんでもないほど売れるようなことはないだろう。
 ついこの間までは電子書籍、電子ブックは辺境だった。その辺境性はブームになっても変わらない。
 出版社が出す単行本はある程度ボリュームが必要だ。しかし、電子出版の場合、ページ数が少なくてもいい。また、いくら分厚い本でも可能だ。
 また、人気がないからといってシリーズものの本を途中で切られる心配もない。
 売れないと困るのだが、売れなくてもそれほど困らないのが電子書籍自費出版の世界だ。個人の範囲内での損、この場合ほとんどが本人の人件費の損だろう。
 そのために買った機材やソフト代などは赤字だが、ほかでも使えるはずだ。
 電子書籍の「書籍」や電子出版の「出版」は、いずれもバーチャルなものだ。ネット上にあるブログとそれほど変わらない。また、本の内容は、ネットを探せば、同じものがあるかもしれない。
 だから、有料ブログ、有料メルマガ程度に思えばいいのだ。
 ブログやホームページを作る感じで、電子書籍を作ればいい。
 ただ、書いた内容に対して対価が発生する。その対価の取り方が電子書籍的方法ということだろうか。
 だから、今まで、ブログやホームページで、何か書きたいと思っていても、無料で見せるのはもったいないと思っていた人でも、有料にすることができるのだ。
 ネット上でボランティア的な書き込みをするのがいやな人でも、読者という客相手にならできるかもしれない。
 つまり、電子書籍の自費出版は、作る側の微妙な要素で起きあがってくる。組織が作った本ではなく、個人が作った本のためだ。
 惜しくも準入選で日の目を見なかった懸賞小説や、学生の頃書いた卒業論文や、それこそ朝顔の観察日記でも、毎晩写している月の写真でも、雲の写真でもいいのだ。
 また、昔写したセピア色になってしまった風景写真やスナップは、貴重な資料になるだろう。
 電子書籍が増え、蛸壺現象になったとしても、そこに自分の本を並べることは、それなりに価値がある。たとえ、一冊も売れなくても蛸壺の中に確実に入っているのだから。

コンテンツ


電子書籍自費出版と蛸壺現象

■気楽に電子書籍が出せる時代
■自費出版と蛸壺現象
■電子書籍の販売と宣伝
■自費出版の特性を活かす
■電子書籍のコンテンツについて
■電子書籍の販売戦略
■電子書籍の編集と装丁
■電子書籍の作成費
■電子書籍のフィル形式
■電子書籍の作成スキル
■蛸壺現象からの脱出
■辺境性は悪くない